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dialogue対談:紺屋 仁 & 田辺あゆみ

「紺屋」とは、
藍染め職人・染物屋のことを意味する
古くからの言葉。
新作Tシャツを染めてくださった
紺屋さんとお話ししました。

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ariの新作Tシャツを染めてくださった三重県の紺屋 仁の美由紀さんと仁さんのお二人。

染めが終わった1便目のTシャツがariのアトリエに届き、
翌日には田辺あゆみ自身にてシルクスクリーンプリントをしようという4月中旬。

沖縄は半袖でエアコンの陽気で、かたや三重ではまだコットンファーをまとい、ヒーターを使う寒さ。
そんな距離をビデオチャットでつなぎ、色々とお話しさせていただきました。

Tシャツはオーダー受付は終了いたしました。
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田辺あゆみ:こんにちは、よろしくお願いします。あ!あのコットンファー※1着てますね!とてもかわいいです。

紺屋 仁(美由紀): そうなんです。あゆみさんも今回のTシャツ着てくれてますね!

田辺あゆみ: そうタイダイの※2。かわいいです!こちらはもうTシャツでもエアコンつけてしまうぐらいですよ。

紺屋 仁(仁):こちらはヒーター炊いてます。(笑)

※1 紺屋 仁さんから送られてきた藍染めされた生地たちの中でも、特に心を奪われた色はオーガニックコットンファーを染めたものでした。

オーガニックコントンファーを藍染めしたもの

photo: 紺屋さんのInstagramより

※2 紺屋 仁さんによる洗練されたタイダイ(絞り染め)のTシャツ。

繊細なタイダイのTシャツを着用する田辺あゆみ

photo: 対談後日にプリントを施したあとのもの。

三重から届いた
「あまり目にしない色」が始まり。

ーーーー さっそくですが、あゆみさんと美由紀さんはどのような経緯で知り合ったのでしょうか?

紺屋 仁(美由紀)(以下、美由紀):私はシルクを藍染めするのが、すごい綺麗だなと思っていて。光に透ける感じとか。でもレースの入ったようなシルクは見たことがなくて、染めてみたいなって思っていて。

あゆみさんのことは私が中学生ぐらいの時ぐらいの時から本当に大ファンでした。ヒステリックグラマーのポスターとかで。もう本当に素敵だなと思って見てて。

Instagramの方もずっと見てたので、タイシルクを使ったariのブランドを始めたっていうのも拝見してました。それで、タイにはシルクのレースがあるのかなと勝手に想像してたんですけど、「SNSでメッセージなんて、、、」とか思いながらも、そんなことしたことなかったんですけど、ダメもとでメッセージしたんです。

まさか返事が来ると思ってなくて。「こんにちは!」て来たので、え!と思ったっていうのが始まりで。本当に私の一方的な思いで、送りました。(笑)

田辺あゆみ(以下、あゆみ):あはは!ありがとうございます。正直なところ、普段あまりDMはチェックできていなくて、何かその時はたまたま気になって見たんですよね。そしたら染めの話しが興味深くて。

ちなみにタイシルクって染められたことありますか?

美由紀: いろんなシルクでは染めてたんですけど、日本とかネパールのものとか。あのあゆみさんに送ったタイシルクは妹がチェンマイに行った時にお願いして買ってきてもらったものだったんですよ。

ーーーー紺屋さんから、あゆみさんの方に染めたタイシルクを送ってくださったんですね。インスタでやり取り始まってから、実際に染めた物を送ることになったのはどのような経緯だったのですか。

美由紀: やっぱり、あゆみさんがいろんなタイシルクを現地でも見てらっしゃるのと、、、

紺屋 仁(仁)(以下、仁):見て欲しかったんだよね?

美由紀: そう!見て欲しかったんです。ただ、単に。藍染めをしたタイシルクを見て欲しいという、、、おこがましいっていうか。厚かましかったんですけど、見てほしいと。

ーーーーすごいですね。「ただ単に見て欲しい」っていうピュアな気持ちというか。

美由紀: そうです、本当に見て欲しい。本当にあゆみさんに見てもらいたいっていう気持ちだけで始まりました。

あゆみ: あはははは。ある日突然、「見てほしいんですけど、送ってもいいですか?」というメッセージをいただいて、こっちとしては逆にそんなもの送ってもらっていいんですか?みたいな感じだったんですけど。ありがたいです。本当にありがとうございます。

受け取ってビックリしました。綺麗で。そのままの感想ですけど。なんと言ったらいいでしょう、薄くもなく、いわゆる藍の濃い色でもなく。「あお」みたいな。ちょっと水色寄りの青、でもなんかあんまり見たことない色っていうイメージでした。

美由紀: うんうん。

あゆみ: よく見る藍染めの色とも違うし。タイシルクってまたちょっと独特で、テカってもいるけれど、ちょっとマット感もある。そこに青が乗っている感じがあんまり見たことないなっていう雰囲気で。そして、すごい綺麗で。

届いたのが夜だったので これは昼間の自然光で見たら絶対に色が違うから「明日、また見てから連絡させてください」ってメッセージして(笑)

それで、次の日見ました。広げて。

そうしたらやっぱり全然違いました。で庭でそれを広げて「うわぁ~!」ってなってたら、アグ(飼い犬)のうんこ踏んでました。

一同:(大笑い)

藍染めの印象を変えるやりとり。
藍のパウダー。

あゆみ: あとはパン!パンも頂きました。藍の入ったパン。美由紀さんのお友達が作らているパン。普通じゃないパンです。青いパンでしたね。めっっちゃおいしい。

本当に、結構衝撃的な美味しさで、、、三重に住もうかなって思ったぐらい。いや、沖縄は本当にパン屋さんおいしいところいっぱいあって、おいしいパンは食べてるから。正直、三重からわざわざパンを送ってくれるって言ってくださった時に、「え。そんなことしてもらわなくても沖縄けっこう美味しいお店いっぱいありますよ(困惑)」って

一同:(笑)

あゆみ: 正直そう思ってたんですけれど、びっくりするぐらいおいしくてホント衝撃でしたね。

美由紀: 藍の葉っぱや軸の部分、それと種など藍の全部を乾燥させたのを酵母にしてもらってて。

あゆみ: へ~、色だけだと思ってました。酵母として使っていたんですね

美由紀: 染め液のインディゴをパウダーにしたもので、それが綺麗な青になって。食紅の青版みたいな。それを実験的に色んなお友達に配ってみたんです。ケーキ作る人とか。

あゆみ: ほー!そうなんですね!私すごく不思議に感じていたんです。というのは藍の葉っぱや、お茶もいただいたけど、それは全然青くなかったじゃないですか?薄いお茶色みたいな。だからなんであのパンはあんなに色もいいんだろうって思って不思議だったんです。

美由紀: 染め液でもそうなんですけど、葉っぱ自体はなんかねあのまま使っても全然青くならないんです。

仁: 藍の葉っぱを原料に発酵させて作った「すくも」と灰汁を使って染め液を作るんですけど、灰汁で発酵させると初めてインディゴ(青)が出てくるんです。染め液が一番活発な時には発酵がプクプクして膜が出てくるんですよ。で、膜は染める時には不要なのでよけるんですが、その膜を乾燥させるとパウダーになり、それが活用できたんです。

あゆみ: ん?膜が、膜がパウダー?

仁: 膜を天日干ししたら藍のパウダーになったんですよ。

美由紀: 塩を作るみたいな感じです。お塩もこう、水分を蒸発させると粉になるっていう感じです。(笑)

仁: やってみたんですよ。偶然、実験的に。そうなんです。

ーーーー愛してますね。

あゆみ:それはそうですよ。

ーーーーそれはそうですよね、ですけど、膜を活用できるというのは想像を超えていました。

美由紀: もともと藍墨っていって藍の墨があったみたいで。昔はそういうものから色を使っていたようです。葛飾北斎の海の青い色とかの一部にも。

仁:それは今もよくある習字で使う硬い墨のようなもので、藍の成分でできた墨があったらしく、浮世絵の青いとこはそれで出しとったらしいです。

あゆみ: へええええええ

仁:パンに入れたものもそれに近いですね。

美由紀: そういう感じかなぁって思ってやったら青が出ました。

その薄い水色がもう本当に
これは単純に「好き」。
もう好き過ぎました。
沖縄の海のような色の印象、
沖縄の空とかね。

ーーーー あとは他にも何かもらってるものがあるんですよね?

あゆみ: もらっているものはいろいろありますけど。(笑)

ーーーー 色々やりとりはあったんですね。

あゆみ: やりとりはね。最初のやり取りから藍染のシルクが届くまでは結構ありましたよね?

美由紀: 1年8か月ぐらいありました。後から気になって(やり取りの履歴を)見たんですけど。

あゆみ: それまでは大した中身のあるやりとりはそんなになくて、何か軽くやり取りするぐらいでした。

シルクを送っていただいた後にすぐ、今度は染められたオーガニックコットンファーを「また送りたいんですけどっ」て言ってくれて。え、いいんですか!?という感じで、「じゃあ、じゃあ私も何か送ります!物々交換しましょう。」みたいな感じで送っていただいたんです。

で、そのファーの色が特に印象深い色でした。そうです、その薄い水色がもう本当にこれは単純に「好き」。もう好き過ぎました。色も素材も全部。

美由紀: 嬉しい。

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あゆみ: 本当はそのコットンファーをそのままariの洋服に使わせて欲しいぐらいだったんですが、それだとそんなに色んな人に見てもらったり、触ってもらったりできないなって。もっと多くの人に着てもらったりできるアイテムはTシャツかな、と。それで、Tシャツで同じような色で染めてもらえないかなって思ったのがこれです。(自身が着ている藍染タイダイのTシャツを指さす)

ーーーー それがきっかけで、Tシャツの制作が実際に始まることになるんですね。 もともと藍染めで何かつくろうと思ってたんですか?

あゆみ: 全くないです。(笑) すみません!むしろ藍染めにいいイメージがなかったんですね。多分、今まで自分が藍染めだと思って触ってきたものとか、手に入れてきたものにあんまり良いイメージがなかったんです。

美由紀: うんうんうん。

あゆみ: それはほんとなんか扱いづらくて、色落ちもすごいし。なんだろうな、、、もう本当に妖怪みたいになっちゃったんです、青いワンピース着てたら。脱いだ時に自分が真っ青で。

仁: ははははは

あゆみ: ホントびっくりして。

ーーーー その時、藍染めで洋服を作ることはないなってどこか刷り込みがありましたか?

あゆみ: いや、藍染でものを作るとかじゃなくて、藍染めのもの、もういらないって思ったんです。

仁: わはははは!

あゆみ: それは濃紺に染められたワンピースで、いいブランドの、わりと高価で「良い」とされているものだったから。それでもこんなに色落ちがするんだったら、もう藍染め無理かなぁって思って。

それ以降、美由紀さんに出会うまで10年以上、藍染めのもの買ってないですね。

ーーーー 紺屋 仁さんの藍染めのものを送ってもらって、その色が良かったから、藍染めを見つめ直すきっかけになったんですね。

あゆみ: かなりなりました。あと、美由紀さんが「色落ちもしないので気にしないで着られます」ということも言ってくれたので。

ーーーー 信じられましたか?

あゆみ: やっぱりいや、ちょっと信じられなかったです。

一同: (笑)

あゆみ: 信じられないし、、、実際いまだに濃紺のものは、、、、触ってないから、、、 まだ分かんないです(笑)

一同: (笑)

ーーーー 落ちる、と経験で刷り込まれてますからね。でも意識が変わりつつあるようですね。

あゆみ: はい。でも、その色落ち問題云々は別にしても、もうあんな色を見たことなかったんですよね。沖縄の海のような色の印象、沖縄の空とかね。

そう、こんな色出せるんだっていうことにもびっくりしました。藍染の知識がとにかくなさすぎて、藍は「濃紺」とか「濃い」「紺色以上のもの」みたいなイメージだったので。

うすい甕(かめ)の薄い色を、
何回も何回も染め重ねて、
一回ずつしっかり洗って、
お日様に当てて
って感じで仕上げてます。

ーーーー 紺屋 仁さんは、色へのこだわりはどうですか?

美由紀: 濃いのも出せるし、薄いのも出せるっていう、本当に色んな色を。元々藍染めには何10色ってあって、(自分たちも)その色が全て染めて表現できるっていうのが理想です。

仁: 今、(一般的には)濃い藍染が主流で、うすい甕(かめ)を置いておかないんですね。でも、うすい甕で何回もつけることによって、堅牢度と薄い色が出せるんです。

あゆみ: は!そうなんだ!?

ーーーー 甕というのは、中の染料の色自体はだんだん薄くなるんですか?

仁: そうです。どんどん使っていくうちに、どんどん薄くなります。

ーーーー  今は多くの人が濃い色を好んで作ってるから、薄い色の染料の甕が不要になってしまって、甕がないってことですか?

仁: そうですね。時代もあります。スピードの時代というか。

美由紀: 染料が濃いとワンツースリーじゃないですけど、ばって染められるんですよね。でも、ムラもできやすい。薄い染料を使うと何回も何回も染め重ねるんですが、ムラはできにくく、堅牢度も高くなります。

あゆみ: むしろ薄い色の方が染め重ねるんですか?

美由紀: 濃い染めは液がしっかり濃いのができたら、意外に染めやすいんですけど。でもそれも下染めを薄いのでしてから、濃い液にまた本染めって感じで重ねます。

あゆみ: はーーーー、へーーーーー。

紺屋 仁(美由紀&仁): 薄いのは薄いのだけ。で、仕上げる。

あゆみ: ちなみに、今回お願いしたTシャツって何回ぐらい染めてるんですか?

美由紀: 6回ぐらいかな。

あゆみ: 6回!???? え、ちょっと衝撃!!

美由紀: もう少し重ねたやつとか、5回ぐらいのもありますけど、だいたい6回ぐらいです。

あゆみ: す、すごすぎる。。。

洗濯に強い、結果が得られる、
というのが大昔の手法を選ぶ理由

あゆみ: 堅牢度ってどんなことですか?

仁: 堅牢度テストっていうのがあって、その業者に任せると、日焼けへの強さや、洗濯での色落ちや色移り、ドライクリーニングとかの耐性などのランク付けのテストがあって。昔のやり方でやってると、それにも耐えうる藍染って感じですね。

ーーーー 不思議ですね。昔のやり方の方が強かったり、色々と表現できたりということですね。

仁: こう、手を抜かずにいろんな手間暇かけてやっとった色は多分すごい堅牢度が高い。何回も何回も染め重ねて一回ずつしっかり洗って、お日様に当ててって感じで仕上げてます。

あゆみ: お日様!!

美由紀: なので、日陰にしまうとかっていうこともなくて、全然天日干しして、しっかり洗って天日干しして、また着てもらう、というようにできます。

ーーーー (以前伺った)藍の栽培や染料作りについてもそうですし、全ての工程でこだわりを保たれていらっしゃいます。モノ作りの過程で「なぜその手法を取るのか」というのは、人それぞれ理由は色々あると思うんですが、紺屋 仁さんは、現代的な手法が嫌だから伝統的な手法を取るという訳ではないんですね?

美由紀: そうですね。特に手法を謳(うた)いたいわけではなく。

仁: 洗濯に強い、結果が得られる、というのが手法を選ぶ理由です。今の藍染めの多くが色落ちしちゃったり、さっきあゆみさんが言ってたように「もう藍染はちょっと」っていう感じの人が多いけど、大昔のやり方でやると、やっぱり洗濯に強い。堅牢度も高いし。

美由紀: やっぱり色が凄い綺麗で。海とか空とか自然の色に近い青?とても綺麗で。

その色を表現しようと思うと、私たちが選んだ(昔の)やり方が一番合ってたというのと、あとは、理にかなった感じがして。何か、一番こうすっと自分に入ってきたのが、そのやり方っていうのもあって。

日本の色んなところで藍染体験をしてみたんですよ。その時に染めさせてもらったところがほとんど、バシャッって入れて洗ってはい終わり、みたいなことがほとんどで。何かこう事務的な感じに違和感を感じて。こんな綺麗な青が本来はこんな事務的な感じだったのかなって思っていて。機械的というか。

それでこんなに綺麗な色で、本当にちゃんと色落ちもせずというものを自分なりに色々探して、それで古布とかを見た時に全然色が落ちてない古布が多くて、「え、じゃあなんで今の藍染ってそんな色落ちしてしまうん?」って思ったんですよね。

そういうこともあって、今の「表現できる」やり方に行き着いたって流れです。それで腑に落ちたというか。やってて自分も凄い気持ちいいし、納得もして。そして、色がやっぱり違う。

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